百合ゲームレビュー -Works of "L" favorites-

サイト移転しました

アオイシロ PC版 感想/レビュー

WS000037tgyhuj.jpg

外伝、ノーマルエンド、バッドエンド、ミニゲームの一部が未プレイ。
これらを攻略後に修正する事とする。
アカイイトのレビューも後に行った。


◆序文:
(注意点、心得)


本作最大の欠点は、蘊蓄(うんちく)の過剰さと
シナリオ構成にある。
物語と蘊蓄は密接に関わっている為、聞き流す
ことも出来ない。

蘊蓄、蘊蓄、蘊蓄、食事、蘊蓄、物語、蘊蓄、食事、蘊蓄、蘊蓄……。

全体の七割は蘊蓄だっただろうか、物語部分は設定とシチュエーションが良いだけ。
“現在(いま)”を描く気が無く、大部分が過去と設定と歴史と蘊蓄に費やされる。
だが辞典を一切読まずに理解出来る方は、蘊蓄量は三割程度に抑えられるだろう。

おそらく本作は、映像作品好きにとっては赤点で、
読み物好きにはほぼ満点で、その評価を二分する事となろう。
(両方が好きな場合は、その程度によって中間点を前後するだろう)

設定と世界観の作り込みは素晴らしいが、それを語る際にまるでプレイヤーを見ていない。
ついてこられる者だけついてこいという姿勢は、ある意味で尊敬に値する。
だが残念な
ことに、筆者にはついて行くことが出来なかった。

非常に優れている演出だが、作画は使い回しが極めて多く、終盤の音響演出も
同じものを使い回している為、ルートも二人分程度を終えると飽きてくる。
しかし、作画以外は様式美と見なす
ことは可能だろう。

人物は魅力的で、蘊蓄無しなら日常会話も面白い方。

百合としても物語としても中途半端ではあるが、人物の設定を覚えて、
見せ場となるシーンだけを抽出すると、かなりのものに見えるだろう。



◇攻略:


プレイ時間目安:六十時間


以下を参照の事。ミスが無く見易さを考慮すると、最もお薦め。
http://kpf.rejec.net/ao_play_pc.html#t

プレイする上で度々お世話になりました、この場にて感謝致します。



簡易表:
(E-からA+まで) 


概ねグッドエンドを基準に評価。実際にそうであるとはいえ、
ナミルートを他より低く評価せねばならないのが実に心苦しい。
グランドルートは叙事的な面が重視され、その他は叙情的な面が押し出されている。

脚本 (what to tell 何を描くか)

グランド
保美

カヤ
コハク
ナミ
物語
D+CCCCD+
構成
D+CCCCD+

(※一.物語とは、世界の変革、個人の心境変化、それらの変化量。描出すべき事象の過不足の無さ)
(※二.構成とは、物語を描く為の適切な場面の配置、伏線、起伏、溜め、ミスリード、小道具の使用等)


以下にある汀ルートの脚本的演出は、大部分がカヤによるもの。

演出 (how to show どう描くか)

グランド保美カヤコハクナミ
脚本的
B-A-A+A-BB-
作画的
B+A-AA-A-B+
音響的
AAA
AAB+
スクリプト
AAAAAA

(※一.脚本的演出とは、見せ場を指す。出会い、別れ、愛情、信頼、危機、対決、和解、真実の劇的発露)
(※二.作画的演出とは、印象的な絵。構図、背景、表情、所作、衣装、色、光、象徴、対比、レンズ効果等)
(※三.音響的演出とは、音楽と効果音の使い方。挿入歌は含むが、演技とシステムボイスは含めない)
(※四.スクリプトとは、画面効果を指す。アイキャッチ、ワイプ、暗転、立ち位置や表情の変化等も含む)




◆脚本:
(シナリオ、構成、テキスト、表現)


本作の作風に当てられたのか、少し回りくどい言い方をしてみよう。
この程度でうんざりする様なら、本作をプレイする事はおよそ不可能だ。
以下の後に、いつも通りの書き方でレビューしていく
とする。真面目なレビューはこの辺りから。

蘊蓄を辞書で読むイメージが伝わる様に、少々模倣をした。
実際は、以下ほどに脈絡が無い訳ではなく、もう少し関連性のあるものに言及される。
回りくどい感じと、いくらか悦に浸っている様子が多少は解かるだろう。


指数関数的なシナリオ構成、初めは緩やかだが終わりに近付くと一気に急上昇する。
ちなみにこの場合の“初め”というのは、底が正数かつゼロよりも大きい数で、負の乗数から始まる場合。


辞典 <指数関数> (※ゲーム同様に、一行を約十七文字とした)

指数関数と言えば化学や物理において
も重要な役割を担うが、数学と言えば
幾何学も重要である。かの哲学者プラ
トンが“幾何学に通ぜざるもの、この
門を入るを許さず”という言葉を残し
た事は有名である。
現代の感覚で言えば、幾何学が哲学に
含まれるというのは、ちょっと意外で
は無かろうか?
幾何学の祖は“ユークリッド”であり、
ギリシア読みでは“エウクレイデス”
であるが、かの幾何学者と同名の者に
メガラの“エウクレイデス”という人物が
いる。
彼はソクラテスの旧い弟子であるが、
ソクラテスにとって弟子という者はお
らず、弟子を友人と見なしていたとい
う。
日本では有名な哲学者のニーチェは、
ソクラテス以前の時代に憧れを抱いて
いた様だが、実は彼は西洋においての
評価は芳しくないと言われている。その
真偽は推して知るべしかな。
こんな風に言えば専門家の方からお叱
りを受けるだろうか。
ソ、ソ、ソクラテスかプラトンか~♪
ニ、ニ、ニーチェかサルトルか~♪


長い場合にはこれの三倍くらい文章量で、民俗学や歴史を二転三転。
逸話に神話、果ては豚肉の解説まで始め出す始末。

しかし、豚は意外に体脂肪が少なく、10%ほどしかないという豆知識は少しだけ興味を引かれた。
それと昔のサンタクロースが煙突に金貨を投げ入れたという話の後で、
“現金最高!”等と述べ、笑える所もあるのだが、そんなのは全体の1%にも満たない。

涙を呑んでも必要な情報だけに限るべきであった。
あるいは資料集の付録としてでも収録すれば、良い落とし所となったであろう。

そういえば、ジークフリートやユニコーンを彷彿させるくだりは辞書に載らなかったが、
最低限それくらいは知っていないと困るという事だろうか。

閑話休題。


まずは構成について。

シナリオ構成に問題あり。誰かれ構わず場所問わず蘊蓄(うんちく)を延々と
語り出す不自然さ。過去を振り返るばかりで、“今”を描こうとしない。

設定とシチュエーションがほとんど全てで、後は口を動かしてばかりだ。
種々の演出はほぼ完璧な為、一時的には気分が高揚するのだが、
プレイし終わった後に、胸の奥にはほとんど何も残らなかった。

伏線は十分に配し回収され、終盤に速足で駆け上がる。
“幽霊”や“椿”、“隻眼の陰陽師”等、ミスリードも十分だった。

終盤までは起伏に乏しい事と、全体的に時間が足りない事が難点だ。限られた時間が
蘊蓄に捧げられたのが問題で、また五日間という設定も物語を描くには難しかろう。

伏線を張る時間と、物語を描く時間の割合が逆転している。

乱暴なまとめ方ではあるが、大体のルートが以下の様な形で決着する。
知らない人が出て来て会話を始める、その少し前に現われた人と戦いだす。
何故か先の人が味方になってくれて、状況が好転する。感動的な雰囲気で終わりを迎える。

テキストについて。

膨大な量の文学や小説を読み込んでいるのが伝わって来る。
雰囲気を出すのも実に上手かった、言葉自体が演出になっている。
設定や知識も含めて、その学の高さが伺える。

作風に合ってはいるが、難読漢字があまりにも多い。辞書が数百回は必要になる。
漢検なら準一級レベルだろうか、固有名詞や読み方まで考慮すると、更にその数を増す。

入力ミスかも知れないが、“科学的エネルギー”ではなく、“化学エネルギー”だろう。
細かい事だが、空気中における酸素の組成(成分)は、
“20%”ではなく“約21%”である。とは言え、端数を切っただけか。

誤字脱字は辞書の中に数回あっただけだろうか、分量に比して極めて少ない。

人物について。

やはり根方宗次、そして夏姉さん。この二人の守るべきや救うべきといった想いが、何より魅力的だった。
重ねて言うが、汀ルートの脚本的演出は、特に夏姉さんの在り方を考慮したもの。



◇演技:


最も印象に残ったのは根方宗次。若干時代がかった低く安定した迷いの無い渋い声。
声無き声を表現するナミ、大袈裟な感情表現が心地良い百子。
カヤの一本気で全てを貫く決意と、内に秘めた優しさ。梢子の良く通る声も良い。

物語があまり描かれない為、声優の技量がそれを演出しなければならない所だが、
どの方もその域に届いている。実に良い仕事だった。
特に
宗次とカヤは最高だった、何度も聴き直したい程。



◆演出:
(スクリプト、画面作り)


日常シーンにおいては、多少過剰な部分があるものの、漫画的な絵柄には合っている。
全体として見れば、ほぼ満点と言えよう。

使い所や回数は少々過剰だが、回想や曖昧な記憶の演出も手が込んでいる。
テキストと併せて、伏線にも近い効能も見られた。
涙でぼやける視界、風に揺れる視野、通常のカメラワーク(パン・ティルト・ズーム)も多い。

思考している時に画面をモノクロにするのは、自己に没入している感じが出ている。
不確かな記憶が色を取り戻す演出も上手い。水(海)に喩えた記憶もその一つ。

立ち絵においては、一貫してPOV(主観)視点、つまり主人公の立ち絵が無い。
これは主人公に対する自己投影を促してくれる。
しかし百合としては、ヒロインと映っていて欲しいと思う所もある。意見が分かれよう。

ロングショットで捉えた絵が印象的だった。逆光においてシルエットが浮き上がり、
ある儀式の一幕が眼に焼き付いた。

主人公が他の娘と仲良くしていると、あるヒロインがジト目で妬いてくれるのが可愛らしい。

スクリプトの組合せは、効果音と併せて気が利いている箇所が多い。
以上までに挙げた箇所の数倍くらいの種類、良いものが見られた。



◇作画:
(キャラクターデザイン、原画
、塗り)


漫画に近い仕上げ。線が太く、若干ベタ塗り気味。
違和感を感じる箇所はほとんど無く、非常に安定している。良い絵だ。

比較的古い作品ではあるが、目のハイライトには縁取りが見られた。



◆音楽:


伝奇の雰囲気を演出するのに、大いに貢献していた。どの曲も質が高く量もある。

挿入歌の使い所も良い、エンディングに繋ぐのも定石通り。

中古でさえ、サウンドトラックが五倍から十倍に高騰していて手が出せない。
再販を願うばかりだ、予約を募ってみたらどうだろうか。



◇効果音:


アナログテレビの旧いスピーカーや、電話の周波数帯域が適切だった。
(通常、電話は3000Hz以上がカットされて、くぐもって聞こえる)

足音は十種類はあっただろうか、道路、階段、山道、海辺、踏み石、洞窟、森。
それらに加えて歩く、走る、着地する等、結構な数に昇るだろう。細かくて良い仕事だ。

箒(ほうき)や蝉(せみ)、島鳴き、葉のガサつき、水の跳ねる音、バスに自動車、
枚挙に暇が無く、数えるのを途中でやめてしまったが、非常に丁寧だった。



◆背景:


J.C.STAFFが担当しているだけあって、質も量も問題無し。
キャラ絵に合っていて雰囲気を損なわない。



◇システム:


インターフェイスタブを極限まで絞っているのが好印象。(僅か四つ!)
逐一、“スキップはどこかな?”等と探す手間が掛からない。
必要な物は全て揃っている、何も問題は無い。

システムサウンドもまた、世界観の演出を助けていた。



◆他:


セーブタイトルで笑いを取りに来る姿勢は良い。“電話に出れんわ”等。



◇結語:


構成と蘊蓄さえ見直せば、名作の域に届いただろう。真に惜しい作品であった。

とりあえず、百子に仙台牛(国産A5ランク)のヒレステーキを食べさせてあげたい。





  1. 2015/01/19(月) 00:12:07|
  2. ADVゲーム
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<きみはね 彼女と彼女の恋する1ヶ月 | ホーム | カタハネ 「Memories are here」 エンディング 和訳・注釈・解釈 第三稿>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://mimesis37.blog.fc2.com/tb.php/167-cdba332c
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

月桂樹

Author:月桂樹
◆サイト移転のお知らせ◆

http://www.yurigame.net/


大変お手数をお掛けしますが
ブックマークの変更など
よろしくお願い致します。




よるのないくに2:
楽しむコツ
・一周目は障害物を無視
・〃好きな武器を使用
・アップデートを適用
・サイドストーリーを
DLCで購入

ヴァルキリードライヴ:
楽しむコツ
デフォルトのペアで
クリアランクSSを取り、
初回からオーダールート
に入ること。
対象ステージはDrive
01~04、12~16
詳細は攻略サイトへ

星彩のレゾナンス:
楽しむコツ
初回に奈岐ルートに入り
プレイ意欲を確立する。
下級生ルートは流し読みで。
ゲームパッド使用推奨。
アクションはガードで
キャンセル可能

最新記事

カテゴリ

更新一覧 (6)
ADVゲーム (35)
ゲーム (18)
新作関連 (16)
コラム他 (23)
オーディオ (6)
星彩のレゾナンス (4)
つうかあ (14)

星彩のレゾナンス公式

星彩のレゾナンス考察

http://www.resonator.jp/

ヴァルキリードライヴ考察

http://www.mana-inagawa.info/

連絡先

laurel32237@gmail.com

サイト内検索

<注意>

本サイト内で用いた
“百合好き”の語は
筆者の想定する層
を指している為、
読者諸氏が必ずしも
そこに含まれる
とは限りません。
“百合”の意味する所も
個人差がありますので
ご注意されるよう願います。

レビュー内にはいくらか
造語を用いています。
留意しておいて下さい。

解説やレビューは
筆者の主観であり
絶対的なものという
わけではありません。

ミスがあっても
気付かずに放置する
こともあります。

示した見解は、
記事を書き上げた
当時のものであり、
現在とは異なる
場合もあります。

整合性を取る為には
記事を全て見直す
必要がありますが、
その為に使う時間が
ありません。
全体の95%が
正しい記述となればいい
くらいの気持ちで
書いています。

当ブログは、
PCからのアクセスを
前提としたサイト作りに
なっています。