百合ゲームレビュー -Works of "L" favorites-

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屋上の百合霊さん 感想/レビュー 草稿

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◆序文:
(注意点、心得)


塗りの質は低い。作画の乱れた箇所が割と目に付く。CGは差分が少な過ぎる。
見せ場の画作りで手を抜く事も多い。ライブで挿入歌が流れない。システムは機能が不十分。

感情移入が分散する群像劇で、別の視点で前のシーンを繰り返して見せるどっちつかずな所。
一部だが伏線の欠ける唐突な場面。パートボイスで九割は音声が無い。読点過多で読み難い箇所が多数。
楽曲数もシナリオの分量に比して少なく、多くのシーンを演出において記号化している。

初めは絵で避け、次に体験版を数分で投げ、一年ほど間を空けて体験版をようやく終え、
それから四ヶ月ほど経って本作を購入し、遂に本編を終えた。

上述した通り、問題は極めて多い。

しかし終わってみれば、これが中々に良いものであり驚かされた。

多くのカップルに対しては、読み手は一歩引いた所から眺める形になっている故、
百合に馴染みが無い者であっても気軽に楽しめるものとなっている。
だがそれは前座に過ぎない。最後にカタルシスを得る為の入念な下準備であったのだと理解される。

その為の通奏低音が流れている事に、物語の中盤に差し掛かった頃に気付かせられる。

また、本作が海外で配信される事は、作品内容を理解した上での決定だと考えられる。
海外では現実への影響を日本よりも考慮する傾向にある。そうした中にあって、
本作が空想と現実、非当事者と当事者間の良き架け橋となる事が期待されるだろう。

以下、ネタバレは「簡易表」と「脚本」、「演技」、「後記」の項に。

本作の場合、カップリング自体がネタバレだと言える為、
未プレイの場合は「簡易表」に目を通すのは控えるように。



◇:攻略

プレイ時間目安:本編/約三十時間 + アナザー/約十五時間 → 約四十五時間


以下は、ファンの方々が有志で作られているwiki。非常に熱意が込められている。
攻略も簡潔にまとめられていて、最も見易いものだと思われる。


http://www32.atwiki.jp/yurireisan/pages/42.html

色々と参考にさせて頂きました。この場にてお礼申し上げます。



簡易表:


シナリオ量の配分は、ほぼ等分。

しかし、五組のカップルのそれぞれに対し、主人公達が割と関わっている為、
そこを考慮すると、配分は四割と六割。後者を五組みで等分すると、各組みは一割二分程度。

主人公とヒロイン、百合霊の二人は密接に関わっている為、併せて評価する。
百合作品において、×の前後関係は重要ではない。

脚本 (what to tell 何を描くか)

比奈×結奈 / サチ×恵
聖苗×美紀
沙紗×羽美
月代×桐
愛来×陽香
茉莉×美夕
物語
B
C
C C C C
構成
B
D- C C C C

(※一.物語とは、世界の変革、個人の心境変化、それらの変化量。描出すべき事象の過不足の無さ)
(※二.構成とは、物語を描く為の適切な場面の配置、伏線、起伏、溜め、ミスリード、小道具の使用等)

牧さん(聖苗)のアレは、伏線や前振りがほぼ皆無であり、ギャグにしか見えない。
筆者は感情移入が浅かった為、困惑するというよりは、盛大に吹き出す事となった。
しかしながら、シナリオ構成と、良くない意味でリアル過ぎる口調を丁寧に作り直せば、名シーンたり得る。


演出 (how to show どう描くか)

比奈×結奈 / サチ×恵 聖苗×美紀 沙紗×羽美 月代×桐 愛来×陽香 茉莉×美夕
脚本的
B C-
C C C C
作画的
B- C C+ C C C
音響的
B B B B B B
スクリプト
B- B- B- B- B- B-

(※一.脚本的演出とは、見せ場を指す。出会い、別れ、愛情、信頼、危機、対決、和解、真実の劇的発露)
(※二.作画的演出とは、印象的な絵。構図、背景、表情、所作、衣装、色、光、象徴、対比、レンズ効果等)
(※三.音響的演出とは、音楽と効果音の使い方。挿入歌は含むが、演技とシステムボイスは含めない)
(※四.スクリプトとは、画面効果を指す。アイキャッチ、ワイプ、暗転、立ち位置や表情の変化等も含む)




◆脚本:
(シナリオ、構成、テキスト、表現)


物語自体に関しては特に個人的な感想になる為、「後記」の項にて言及。

構成について。

本作は群像劇であり、またカップル毎の視点で同じ出来事を繰り返す事が多い。
加えて、カップル毎のエピソードを続けて見られる場合もあれば、
毎回切り替えて少しずつ進めて行く事もある。

これらによって、感情移入が分散し、一人当たりの感情移入は浅くなる。
また、時間を巻き戻す事や、頻繁な視点の切り替えによって気持ちが冷める。
せっかく盛り上がった所で場面選択へ、というパターンが割と多かった。

群像劇の基本は、一本の木のように描く事であり、本作ではその幹に相当するのが、
主人公とヒロイン、それに百合霊の二人である。

枝葉である他のカップルに比重を置き過ぎないようにいくらか配慮した結果が、
アナザーシナリオという形に顕われている。
繰り返しを無くし、一本道に近づければ、理想的な群像劇となった事だろう。


脚本について。

牧さんが義憤に燃えて血潮の湧いたあのシーン。
余りに唐突で、前振りが足らない。豹変したようにしか見えなかった。
良くない意味で生々しく、現実の非行少年を思わせた。

しかし周囲の反応や理由付けに関しては、それなりに配慮が行き届いていた。

人物について。

結奈の世話焼きな所や、料理好きな所が個人的に魅力的だった。

少々話が逸れるが、<カレーなんて誰でも作れるんじゃないの?>的な発言に対する
結奈の反応には、思わず共感を覚えた。個人的な話ではあるが、
筆者はルーを使わずに粉から始める人である為、何度も頷いてしまった。

彼女の過去は胸に刺さるものがある。
面倒を押し付けられても嫌な顔一つしない美紀に、
結奈が自身の姿を垣間見た時から、物語が動き出すのを感じた。

テキストについて。

台詞であっても、「」が無く、内面描写との区別が付き難い。

読点が非常に多い。かなりくどいが、意味が明確なのは良い。
台詞の間を表現しているのは判るが、本来それは台詞のト書きに書くものだ。

しかし、本作は声が付かない部分が非常に多かった為、
台詞自体に間を作って、読み手に演技を演出させる事になった。
自らが心の中で演技(再現)する事で、あれら多くの読点は自然なものとなるだろう。

結奈
「言わなきゃ、わかんないんです、自分が、どう思ってるか、なんて。
他人が、どう思ってるか、なんて」”


ゲーム内ではそれまでの文脈から理解されるが、以下のようなト書き(条件指定)で読む事。

結奈「言わなきゃ、わかんないんです、自分が、どう思ってるか、なんて。
他人が、どう思ってるか、なんて」” 
(演出指定:言いたくない事を言っているシーン

結奈「どうして、先輩、毎日こんなこと、いろんな人のこと、
手伝ってるんですか?」” 
(演出指定: 〃

行為の前に、ご飯を食べさせ過ぎて
相手のお腹が出てしまうのを気遣うのは女性らしい。

表現について。

“ヘロってる”という言葉には、現代的な趣きがある。
“仕事吸引力”というのも面白い。物語後半では、色々あって吸引力をあえて落としたが。
“百合パトロール”も聴いた瞬間に思わず腹を抱えてしまった。

主人公の“レズの人?”発言を受けて、百合霊の一人が、
“そういういやらしい言い方しないでほしい”と言う。

これは、“レズ”と言えば、一般的にはそういった行為における特定の絡み合いを
想起させるからである。また、身近な所にレズビアンがいないのが普通である為。
仮にいたとしても、カミングアウトされない限りは気付かないだろう。

ギャグについて。

以下は
陽香の独白。例外と一般を取り替えた、良いギャグだ。

今日は間に会ったべ? なんせ、
横断歩道で困ってるバーサンがいなかったからな!

誤字脱字について。

名前の表記ミスは美夕 ⇒ 茉莉 で一回のみ。
他に関しては二ヶ所程で、分量に比して極めて少ない。



◇演技:


沙紗が羽美に告白するシーン、テキスト上では読点が一つだが、
三秒ほどの間を取っているのは良い演出。人物の心情を良く汲み取っている。
もしかしたら、台本のト書きに書いてあったのかもしれないが。

沙紗「あたしね、羽美のことが好きなんだ」
            ↓
沙紗「あたしね…………羽美のことが好きなんだ」

以下のものも、状況を理解しての良い演技だった。

結奈「うん……。勉強しよっか
            ↓
結奈「あぁっ……! うん……。勉強しよっか

それぞれ上が元のテキストで、下が演技としての台詞。

本編におけるクライマックス、三十年越しの念願が叶い、
ようやく身も心も結び合った百合霊の二人。
二人の切実な想いとその心からの歓喜は、誰の胸をも震わすだろう。



◆演出:
(スクリプト、画面作り)


“キラキラ作戦”において、印象的な場面を立ち絵で済ませていたのは残念だ。
赤い夕陽が、日中の日差しになっているのも同様。

回想において、画調がそのまま。しかしその回数自体が少ない為、さして問題ではない。
鮮明な記憶を演出しているという可能性もある。

上の階に上がる時は、上方向のワイプ(画面切り替えの手法の一つ)、
下の階に下る時は、下方向のワイプを用いているのは良い。

人とぶつかった時などにシェイク(画面を振る)を用いる事が多数。

被写界深度エフェクトで、背景をボカし、
人物を浮き上がらせる事で、印象的な画作りを行う事も見られた。



◇作画:
(キャラクターデザイン、原画、塗り)


五月の三枚目、足の重なり方が不自然。左の腿が直線的過ぎる。

六月の一枚目、左足裏の角度がおかしい。外側に開き過ぎている。
大きさも一回り大きい。(広角パースでもないのに)

五月の九枚目、牧さんの首が引っ込んだ亀のようになっている。
この場合、肩が上がっていないとおかしい。

六月の五枚目、
陽香の側副靱帯膝裏の細い靭帯)が消失している。
デフォルメにしても割と不自然で、線の描き出す位置と影付けに違和感を覚える。
ちなみに腕の方は靭帯を無視していない。

九月の四枚目における差分三枚目、顔全体が手抜き。

九月の八枚目、月代の顔が角張っている。

九月の十枚目、美夕の足の重なり方が不自然。
腿が直線的過ぎる。

十月の十枚目、前腕が短過ぎる。上腕との比率がおかしい。
つまり、上腕をもっと短くし前腕をもっと長くする必要がある。

十一月の三枚目、密着しているが、影や隙間が無いと輪郭が不自然。

ほぼ全キャラにおいて、眉毛が短過ぎる。
そういう人物が当然いてもいいとは思うが、少々やり過ぎなように感じられる。

恵の病み芸が思わずクセになる。あの表情は良い。

口のデフォルメは古風で、歯を見せない事がある。
キャラクターデザインそのものは多様であり、どれも個性的で良いものだと思う。



◆音楽:


ライブで歌を流さないというのは、あまりに残念だ。

「一里塚」というギターのアルペジオが耳に残る。
抱えた想いを口に出来ない者達を象徴しているように、個人的には思える。

ポップな曲が多く、それが本作において表面的には明るく軽く感じられる。

ここだけを一聴すると、ライト層向けだけに作られた作品だと錯覚してしまうが、
最後まで終えると、それだけではなかったという事が解かる。多くのユーザーに対して、本作は開かれている。



◇効果音:


キーボードの“カタカタ”、傘の“バサッ!”、雨、風、太鼓、プリントめくる音、包みを開ける音、
ペンのガリガリ、棚を閉めるバタン!、蛇口から水のジャーという音、食器を拭くキュッキュッ、
外を走る、校内を歩く・走る、チャイム、食器のカチャつき、バーベキューで焼く音、
ケータイのアラームやピッ!という音が複数、ホッチキス、冊子を机にトントン、
ジャガイモの皮を剥くシャリシャリ、セミやヒグラシの声、袋のガサガサ、雑誌をめくる音など、
かなり細かく効果音が付せられていた。



◆背景:


仕上げの簡素なキャラクターデザインに合わせる形を取ったのだろう。特筆すべき点は無し。



◇システム:


テキストボックスの透過調整、個別音量調整が出来ない。
メッセージスピードは三段階。バックログはテキストボックス内の四行のみ。
暗転が長く、次のシーンを選択するまで四秒ほどかかる。スキップすれば一瞬で済むが。
オートをオンからオフに切り替えると、途中で音声の再生が終わる。

一人称(人物の視点)が変わる度に、名前とSDキャラが表示される。
これによって、気持ちの切り替えを促してくれる。



◆他:


<メロンパンにメロンは入っていない>という衝撃の事実……!



◇結語:


欠点は多いものの、主人公達四人に関しては割と丁寧に描かれていた。

仮にアニメ化される事などがあったなら、より多くの方々に愛される作品となる事だろう。



★後記:



他者と関わる中で変わっていく主人公。自分自身の過去と向き合い、
その中で、自分を一番近くで見ていてくれた者がいる事に気付かせられる。

主人公より一つ年下の幼馴染。生まれた時から主人公と一緒にいた彼女もまた、
先輩達の想いを知る事で、自身の胸に秘めていたものの正体に気付く。

トラウマとなった過去を紛らわせる為でもあったが、家族や友人、幼馴染の世話をしてきた主人公。
特に幼馴染に対しては、毎日のように食事を作っていた。

支える事で、実は逆に支えられていた主人公。支えられる事で支え、見守っていてくれた幼馴染。
自身の気持ちが判らずに戸惑っていた主人公ではあったが、遂には、それぞれの想いは交わる事となった。

そして、二人の百合霊の悲願を叶える為に、一肌脱ぎ、
後に互いの想いと肌を重ね合わせるのであった。

私は、最初はどの者に対しても感情移入が浅く、手伝わされているという思いが強かった。
しかし中盤からは
、結奈の真実が明らかになって行くにつれその魅力に惹かれ、思わず感情移入していた。

そうして
結奈が比奈に告白され、真っ直ぐな想いを伝えられた時には、我が事のように嬉しく思った。

百合霊の二人との別れが訪れ、エンディングでこれまでの事を振り返った時には
感慨深いものがあった。努力が報われた気がした。本作をプレイして良かった。

語らずとも解かり合える、言葉少なに結奈と比奈が寄り添って歩く未来が見える。

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  1. 2016/02/06(土) 01:17:21|
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